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映像制作機器の未来を考える

映像制作機器の未来を考える

2018年も残り少なくなったが、今年も多くのミラーレスカメラが発表された。先日はそれらの中からベストプロダクトを選出したが、今回は少し違った観点から見てみよう。すなわち、映像制作の将来を、これらのミラーレスカメラに重ねて占ってみたい。ミラーレスカメラの最新技術は、今後の映像制作にどのような影響を与えるだろうか?

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image credit (cropped): Lucas Favre via Unsplash.com

今年は、富士フイルムX-T3、キヤノンEOS R、ニコンZ6、Z7、ブラックマジックポケットシネマカメラ4K(BMPCC4K)、ソニーα7 III、パナソニックGH5 / GH5sなど、多くのミラーレスうカメラが発表された(2018年のベストカメラの記事はこちら)。これらのカメラは、プロ用のデジタルシネマカメラに比べると非常に小型軽量、低価格だが、今やその画質を含め、映像制作に大きく関与している。数年前には予想できなかったことだ。

ビデオ技術

映像品質に最も影響を与える1つの要素は、ビット深度とクロマサブサンプリングだ。もちろん他の要素もあるが、4:2:2/10ビットが記録できることは、コンシューマカメラとプロ用カメラを分ける最も重要な要素の1つだった。しかしこの壁は崩壊しようとしている。 2017年初頭にリリースされたGH5は4:2:2/10ビットを内部記録することができるマイクロフォーサーズのコンシューマー用カメラだ。 そして、2018年に発表されたミラーレスカメラの多くは、4:2:2/10ビットを内部記録できるか、少なくともHDMI経由で出力することができる。 また、BMPCC4KはRAWをcDNGストリームとして記録できる。さて、ソニーα7 IIIは、内部で4:2:0/8ビット、外部出力でも4:2:2/8ビットに留まっている。α7S IIの後継機はどうなるのだろうか、非常に興味があるところだ。 なお、富士フイルムのX-T3は内部で4:2:0/10Bit、外部には4:2:2/10bitを出力できる。

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パナソニックのLUMIX S1、S1R、前述のソニーα7S IIの後継機といった新製品が2019年に期待されている。これらはフルサイズセンサーだが、これに4:2:2/10bitが搭載されると、いよいよプロ機器に迫ることになるだろう。

すなわち、プロ用カメラに採用されていた技術が、コンシューマークラスの価格帯まで下りてくることが予想されるが、この流れは今に始まったことではない。しかし特に2018年はこの傾向が本格化した年と言えるだろう。要点は、ミラーレスカメラの進化は、もはや画質を犠牲にすることはありえない、ということだ。小型軽量で低価格のコンシューマーカメラの画質はプロ機器に及ばない、という常識は今後崩れていくだろう。これは、映像制作における新しい考え方と新しいコンセプトの扉を開くことだろう。

他の機器

この流れはカメラだけではない。映像制作にかかわるすべての機材は、品質を損なうことなく、より小さく、より軽くなり、更に高性能になる。プロカメラに電力を供給するVマウント/ゴールドマウントバッテリーも、今やサイズは小さくなっている。 BebobはV-microシリーズのバッテリーを、CoreSWXはHypercore 9 MiniとPower Base EDGE(BMPCC 4K用)を発売している。カメラをシステムアップすると、バッテリーが大きく重い要因になるが、これも徐々に解決されるだろう。

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モニターレコーダーなどの外部ビデオ記録はまだ残るだろう。しかし、本格的な外部記録の機材でも小型化が進んでいる。 Atomos Shogun Inferno はミラーレスカメラには多少大きすぎるため、Ninja Vが開発された。 BMPCC4Kは内部でRAW記録でき、この目的での外部レコーダーは既に不要だ。2019年には、更に高いフレームレートやレコーディングモードを備えた、より小型のカメラが出てくるかもしれない。

スタビライザー

スタビライザーは、2018年のキーワードの一つだろう。ジンバルスタビライザーは、今や一般的な撮影機材となったが、カメラボディ内手振れ補正の性能も格段に向上している。富士フイルムX-T3(レビューはこちら)はボディ内手振れ補正を搭載していないので、ジンバルが必要になる。

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MōVIProのような大きなスタビライザーとDJI Ronin 2(レビューはこちら)のような小型のシングルハンドジンバルのギャップは、もはやそれほど大きくない。確かに、より大きなスタビライザーはより重たいカメラを乗せられるが、ミラーレスカメラの画質が向上しているため、Ronin-Sのような小型のジンバルでも遜色ない映像が撮れる。Tilta Gravity G2XやZhiyun Weebill Labなど、高性能で低価格のジンバルスタビライザーも多く発売されている。

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DJI Mavic 2 Pro. Source: DJI

ドローンでの空撮映像を普通に見るようになったのも今年だ。DJI Mavic 2 Proはポケットサイズのドローンだが、高機能を満載している。気軽にドローンを携帯し、撮影できるようになったのだ。ここで空撮が必要と思い付いたらすぐに(条件が許されれば)空撮することができる。Inspire 2ではできなかったことだ。 Inspire 2は優れたドローンだが、多くの用途でMavic 2のほうが使いやすいだろう。

バッグ類

大量の撮影機材を一つのバッグに収納することができる。Peak Design Travel BackpackやWANDRD PRVKEは内部に機能的なセパレーターを持つ便利なバッグで、さまざまなサイズを用意している。

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Peak Design Travel Backpack (with folded away straps).

バッグは、ポータブル性、汎用性、カスタマイズ性に優れ、より丈夫になり、畳むと小さくなる。一人で撮影する場合に大きな助けとなるだろう。カメラ、フィールドモニター、レンズ、ジンバル、ドローン、三脚、バッテリー、メディアなどが小型化したので、すべてを収納しておくことができる。2015年頃の撮影機材から考えると、驚くほどの進化を遂げている。

ミラーレスカメラの今後

ミラーレスカメラは、キヤノンC300MarkIIといったプロ用カメラのBカメラとしても使用されてきた。しかし今後は、プロジェクトにもよるが、大きなカメラに置き代わっていくだろう。 Phantom 4 Pro V2.0やInspire 2の代わりにMavic 2 Proを使うことも現実的だ。確かに、画質の点でわずかな違いがあるが、よほど高画質での撮影でない限り、十分通用する。

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Nice cam.. but it’s huge! Image credit: Jakob Owens via Unsplash.com

それでも上位のプロ用カメラは、この業界で必要とされることは間違いない。しかし、そのようなケースも徐々に減っていくだろう。最高の画質や機能を持つ機材が必要なプロジェクトもあるだろうが、平均的な映像制作者にとっては、小型軽量で手頃な価格の機材を選択するのは、極めて合理的で現実的なことだ。もちろん、前述のように、手頃な価格というのは低品質という意味ではない。オーディオ機材のように、映像撮影機材も、もはや最先端である必要はないのだ。

プロカメラはプロジェクトに応じてその価値を発揮する場合もある。しかし、そうでないプロジェクトでは、コンパクトなシステムで十分だ。

ポストプロダクション

ポストプロダクションでもこの流れは同じで、ラップトップがワークステーションにとって代わりつつある。ポータブルeGPUを接続すると、ラップトップでも編集/グレード/エクスポートまで、問題なく処理できる。専用の編集ルームでなくても、外出先でこれらのプロセスが完了できてしまう。2015年には不可能だったことが、2019年には普通になっているのだ

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今後もこれらの進化は止まらないだろう。2018年の新しい映像制作機器は、2019年以降の方向性を示唆している。今後の映像制作の進化が楽しみだ。

 

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